屋根カバー工法の見積もりの中身を知って、出てきた金額を自分で判断できるようになりませんか?屋根は自分の目で見えない場所なので、その金額が高いのか安いのか確かめにくいものですよね。
古い屋根の上に、新しい屋根を重ねるのがカバー工法。ところが費用を調べてみると、30坪の総額で60万円と200万円。同じ30坪なのに3倍以上の差があります。
そこで、
「うちはどっちの数字に近いの?」
「なぜ3倍も開くの?」
と気になるあなたへ、屋根カバー工法の費用の見方をご紹介します。費用の目安を出している媒体を8つ集め、いくらかだけでなく、その金額が屋根の広さをどう見ているかも拾いました。
金額が開く原因は、屋根材のグレードではありません。30坪という言葉が、屋根の広さを表していないことにあります。自分の家の屋根が何平方メートルあるのかを出しながら、見積書の金額を確かめていきましょう。
この記事の内容全 33 項目
屋根カバー工法の費用は工事の中身で決まる

カバー工法は古い屋根の上に張る工事
カバー工法とは、古い屋根を外さずに、その上から新しい屋根材を張る工事のこと。まず足場を組み、古い屋根の棟板金(むねばんきん=屋根のてっぺんを覆う金属)や雪止めを外します。そこへ防水シートを敷き、新しい屋根材をかぶせていきます。
古い屋根材と、その下の防水シートは残したまま。つまり屋根が二重になります。上に載せるだけなので、下地である野地板(のじいた=屋根材を留める板)まで手を入れることはありません。
新しく張るのは、ガルバリウム鋼板などの金属屋根。古い屋根を残したまま上に載せるので、屋根全体の重さは工事の前より増えます。軽い屋根材が選ばれるのは、その増える分をなるべく小さくするためです。
張り替えより費用が下がるのは撤去がないから
屋根を新しくする工事には、もう一つ張り替えという選び方があります。こちらは古い屋根材と防水シートを外し、下地を見てから新しくする工事。傷んだ野地板があれば、そこで直せます。
2つの工事の差は、古い屋根を外すかどうかです。外せば、屋根材は産業廃棄物として運び出し、処分場に持ち込むことになります。この運搬と処分にかかる金額が、カバー工法では出てきません。
調べたサイトでは、張り替えとの差を20万円から40万円と書いていたところがありました。撤去と処分だけで10万円から30万円という記述もあります。工事の中身が違うのだから、総額も違ってきます。
屋根カバー工法の費用は30坪でいくらが目安か

30坪の総額には、大きな幅があります。金額がどこまで重なるかと、1平方メートルあたりの単価を見ていきましょう。
総額は60万円から200万円まで幅がある
屋根カバー工法の費用は、延床30坪の住宅で60万円から200万円が目安。3倍以上の幅があります。
費用を載せているサイトを8つ集めたところ、30坪という条件をはっきり書いていたのは6つでした。同じ30坪の家について、それぞれが出している金額です。
| 調べたサイト | 30坪の総額 |
|---|---|
| Aサイト | 60万〜150万円 |
| Bサイト | 80万〜150万円 |
| Cサイト | 120万〜200万円 |
| Dサイト | 80万〜120万円 |
| Eサイト | 100万〜200万円 |
| Fサイト | 80万〜150万円 |
予算を立てるには、この幅は広すぎると思いませんか?どれを基準に置けばいいのかがわかりにくいのが難点です。
すべての金額が重なるのは120万円の1点だけ
6つの帯を数直線に並べると、重なり方が見えてきます。全部が同時に含んでいる金額は、120万円ちょうどの1点しかありません。
下限がいちばん高いのはCサイト、上限がいちばん低いのはDサイト。この2つが接する1点だけが、6つすべてに含まれます。Cサイトを外せば、残り5つは100万円から120万円の帯で重なります。
つまり、多くのサイトが見ている中心は100万円台の前半で、そこから上下に幅が伸びている形。予算を1つの数字で置くなら、この帯が出発点になります。
屋根材だけの単価と工事一式の単価が混ざる
総額ではなく1平方メートルあたりの単価で書かれていることもあります。この数字が何を含むかは、まちまちでした。
| 単価が指すもの | 1平方メートル |
|---|---|
| 工事一式 | 8,000〜15,000円 |
| 屋根材だけ | 5,000〜9,000円 |
| 足場だけ | 600〜1,000円 |
屋根材だけの単価を見て「うちは安く済みそう」と考えると、足場も防水シートも入っていない数字を見ていることになります。工事一式なのか、屋根材だけなのか。単価を比べるなら、まずそこを見ます。
外壁塗装でも同じことが起きています。外壁塗装の平米単価では、同じ言葉で1,700円と7,500円が並んでいました。
なぜ同じ30坪なのに総額が3倍も変わるのか

30坪と書かれていても、屋根の広さは家ごとに違います。延床面積と屋根面積の関係と、建物の形で変わる広さを見ていきましょう。
30坪は延床面積で屋根面積ではない
30坪は、1階と2階の床を足し合わせた広さのこと。延床面積と呼びます。いっぽう屋根が載るのは、建物のいちばん上の一面だけ。2階建てなら、2階の床とほぼ同じ広さの上に屋根が架かります。
延床30坪はおよそ99平方メートル。総2階の家なら、1階も2階もその半分の約50平方メートルずつです。屋根はこの50平方メートルの上に、軒の出のぶんだけ外へ張り出して載ります。
2階建てと平屋では屋根面積が1.8倍違う
同じ延床30坪でも、平屋なら話が変わります。30坪ぶんの部屋がすべて1階に並ぶので、屋根が覆うのは約99平方メートル。2階建ての倍の広さです。
| 単位は平方メートル | 建物が接する広さ | 軒を足すと | 4寸勾配で |
|---|---|---|---|
| 総2階 | 約50 | 約68 | 約73 |
| 平屋 | 約99 | 約125 | 約135 |
軒の出を60センチ、屋根の勾配を4寸として計算すると、総2階が約73平方メートル、平屋が約135平方メートル。1.8倍の差になります。屋根材と張る手間は広さに比例するので、1平方メートルあたり1万円で見積もれば、この部分だけで60万円ほど変わる計算です。
屋根面積を書いていたのは2サイトだけ
集めた8つのうち、延床30坪に対して屋根が何平方メートルになるかを書いていたのは、たった2つでした。
一方は60から70平方メートル、もう一方は約100平方メートル。しかも後者は同じ記事の別の場所に、120から160平方メートルという数字も載せています。いちばん狭い数字といちばん広い数字を比べると2.7倍です。
総額が3倍開く前に、その前提となる面積が2.7倍開いている。金額だけを並べて高い安いを言っても、比べたことにならないわけです。
自分の家の屋根面積を出す3つの手順

屋根面積は、図面がなくても3つの手順で出せます。軒の出と勾配の足し方と、見積書との照らし方を見ていきましょう。
1階の外周に軒の出を足す
まず使うのは、建物が地面に接している広さです。
総2階なら1階の床面積、平屋なら延床面積がそのまま当てはまります。ここに軒の出を足します。軒の出とは、屋根が外壁より外へ張り出している部分の長さのこと。四方すべてに付いていて、ここでは60センチとして計算します。
7.3メートル×6.8メートルの総2階なら、四方に60センチずつ足して8.5メートル×8.0メートル。真上から見た屋根は約68平方メートルになります。
勾配の分だけ割り増す
次に足すのは傾きの分。屋根は傾いているので、真上から見た広さより実際の面積は広くなります。傾きを表すのが寸で、水平に10進んで4上がる屋根を4寸勾配と呼びます。
| 屋根の勾配 | 割増の係数 |
|---|---|
| 3寸 | 1.04 |
| 4寸 | 1.08 |
| 5寸 | 1.12 |
| 6寸 | 1.17 |
この68平方メートルに4寸ぶんを掛けると、約73平方メートル。これが屋根材を張る広さの目安です。勾配が分からなければ、4寸で置いて構いません。急な屋根ほど数字は伸びます。
見積書の数量と見比べる
最後に、出した数字を見積書の数量欄と並べます。2割以上ずれているなら、どうやって測ったのかを聞いてみてください。
国は屋根の数量の数え方を決めています。公共建築数量積算基準では、金属屋根の面積を軒先までを含めた面積とし、そこから天窓などの開口部を引く決まり。ただし1か所あたり0.5平方メートル以下の開口部は、引かずにそのまま数えます。
国の基準は、延床面積に係数を掛けるのではなく、実際の屋根の形を測って数える方法をとっています。ここで出した数字も概算。ただ家の形に沿って積み上げるぶん、坪数から一気に換算するより実物に近づきます。
※参照元:公共建築数量積算基準(令和5年改定)|国土交通省(2026年8月時点)
カバー工法を選べない屋根がある
どんな屋根でも上に載せられるわけではありません。下地の状態と屋根材の種類、2つの分かれ道を見ていきましょう。
下地が傷んでいると上に載せられない
土台になるのは古い屋根です。そこが傷んでいれば、上に積めません。
確かめるのは野地板の状態です。雨漏りや結露で湿った野地板はやわらかくなり、新しい屋根材を留めるビスが効きにくくなります。小屋裏に上がって、シミやカビ、断熱材の湿りをチェック。傷みの程度が分かります。
すでに雨漏りしている家は、もう一段の注意が要ります。水の入り口が屋根材ではなく、板金のつなぎ目や壁との取り合いにあることがあるからです。原因を残したまま上から覆っても、見えない場所で水が回り続けるだけ。下地から直す張り替えを選ぶことになり、費用は上がります。
瓦と波形スレートは別の判断が要る
屋根材の種類によっても、カバー工法を選べないことがあります。
瓦屋根が選ばれないのは、重さが理由。瓦を残したまま新しい屋根を載せると、建物にかかる重さがさらに増えます。瓦をいったん下ろし、軽い屋根材に替える張り替えを勧められることが多くなります。
工場や倉庫でよく見る波形スレートは、屋根材を留める下地の位置や間隔が住宅用の屋根と違います。金属屋根をそのまま留められないことがあり、下地を新しく組んでからの工事に。2006年9月より前に建てられた建物なら、石綿を含む屋根材の可能性も出てきます。
| 屋根の状態 | カバー工法 | 代わりの工事 |
|---|---|---|
| 野地板が傷んでいる | 選べない | 張り替え |
| 雨漏りしている | 原因しだい | 原因を直す |
| 瓦屋根 | 選ばれない | 軽い屋根材に替える |
| 波形スレート | 下地しだい | 下地を新しく組む |
どれも屋根に上って中を見ないと判断できません。現地を見ずに金額だけを出してくる相手には、何をどう調べたのかを尋ねます。
見積書のどの項目で金額の差が出るのか

総額の差は、いくつかの項目に分かれて出てきます。足場と屋根材、それに一式と書かれた項目の見方を見ていきましょう。
足場代は9万円から30万円で3倍違う
足場代は、金額そのものより倍率で差がつく項目です。30坪の例では、いちばん低い数字といちばん高い数字で3倍以上の差がありました。
単価は1平方メートルあたり600円から1,000円で計算されていました。この差だけでも1.7倍。そこへ足場を架ける面積の見方が加わります。建物の周りにどれだけ余裕をとるか、飛散防止ネット(工事中の落下物を防ぐ網)を張るかどうかで、同じ家でも数量が変わります。
足場代を決めるのは屋根の面積ではなく建物の外周。屋根が小さい家ほど、総額に占める割合が重くなります。外壁も同じ足場を使うため、時期を合わせれば足場は1回分。外壁塗装の相場とあわせて考えると、足場代を二重に払わずにすみます。
屋根材はガルバリウム鋼板と石粒付きで単価が違う
新しく張る屋根材は、種類によって単価が変わります。基本になるのはガルバリウム鋼板。表面に石の粒を焼き付けた石粒付き金属や、裏に断熱材を貼り合わせた断熱材一体型を選ぶと、そのぶん単価は上がります。遮音性や夏の暑さ対策を重く見るかどうかで、選び方が分かれます。
ただし同じガルバリウム鋼板でも、数字は5,000円から13,000円まで幅がありました。材料そのものの金額なのか、張る手間まで入った金額なのかが違うからです。材料費だけの数字を見て予算を組むと、あとから施工費が乗ってきます。
一式と書かれた項目は屋根面積に直せない
見積書に「屋根工事一式」とだけ書かれていると、数量も単価も分かりません。自分で出した屋根面積と照らせず、他社の見積書とも比べられなくなります。
頼みたいのは、数量と単価を分けた書き方です。屋根材が何平方メートル、足場が何平方メートル、棟板金が何メートル。この形で書かれていれば、自分で出した屋根面積の概算と突き合わせられます。
その場で契約しないことも決め手になります。国民生活センターに寄せられた点検商法の相談は、2025年度に19,696件ありました。
屋根工事にしぼった調査では、契約した人の8割超が60歳以上でした。点検に来た業者から「今すぐ直さないと危ない」と言われても、見積書を持ち帰ってもらい、数量を確かめる時間をとりたいところです。
※参照元:訪問販売によるリフォーム工事・点検商法
/屋根工事の点検商法のトラブルが増えています|国民生活センター(2026年8月時点)
工事の前に要る手続きと要らない手続き

工事の前の手続きは、工法によって変わります。建築確認とアスベストの調査、2つの決まりを見ていきましょう。
建築確認はカバー工法なら申請しなくてよい
屋根のカバー工法に建築確認の申請は要りません。国土交通省が資料の中で、この工法を名指しで扱っています。
既存の屋根の上に新しい屋根をかぶせるようないわゆるカバー工法による改修は、法第2条第14号に規定する大規模の修繕及び同条第15号に規定する大規模の模様替には該当しないものと取り扱って差支えない。
※引用元:木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について|国土交通省(2026年8月時点)
大規模の修繕にあたらないので、確認申請の手数料も、そのための図面を用意する費用もかかりません。手続きの費用がゼロで済むのは、カバー工法を選ぶ理由の一つになります。
張り替えは条件しだいで建築確認が要る
いっぽう張り替えは、工事の範囲によって扱いが変わります。条件は同じ資料に書かれています。屋根材を替えた結果として屋根を構成するすべての材を改修することになり、しかもその部分の総水平投影面積が過半のとき。この場合が大規模の修繕にあたります。
屋根材と防水シートを替えるだけなら、この条件には届きません。野地板まで新しくして、それが屋根の半分を超えるときに、はじめて手続きの話が出てきます。
2025年4月に建築基準法が変わり、木造2階建ての住宅も建築確認の対象になりました。それまでは階数2以下かつ延べ面積500平方メートル以下の木造なら、基本的に対象外でした。下地から直す工事を考えている家は、申請が要るかどうかを先に調べておくと安心です。
アスベストの調査は工法を問わず必要
石綿の事前調査は、カバー工法でも張り替えでも必要です。工事の規模の大小を問わず、改修する部分のすべての材料について調べると決められています。
調べるのは資格を持った人です。2023年10月から、建築物石綿含有建材調査者などの資格がないと事前調査ができなくなりました。さらに改修工事では請負金額が100万円以上になると、調査の結果を労働基準監督署へ電子システムで報告する義務が生じます。
30坪のカバー工法は100万円を超えることが多く、報告まで含めて対象に入ります。古い屋根材を撤去しないカバー工法は処分費こそかかりませんが、調べる手間は残るということ。見積書に調査の費用が入っているか、確かめておきたい項目です。
※参照元:改修・リフォーム業者のみなさまへ|厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト(2026年8月時点)
屋根カバー工法の費用は屋根面積をそろえてから比べる
屋根カバー工法の費用は、延床30坪で60万円から200万円。3倍以上の幅がありますが、多くの媒体が重なるのは100万円から120万円の帯でした。
この開きをつくっているのは屋根材の差ではなく、30坪という言葉が屋根の広さを指していないことでした。同じ延床30坪でも、総2階なら約73平方メートル、平屋なら約135平方メートル。この差が、屋根材と張る手間の量にそのまま効いてきます。
だから見積書を比べる前に、自分の家の屋根の広さを先に出しておく。1階の外周に軒の出を足し、勾配の分だけ割り増せば、近い数字にたどり着けます。あとはその数字を見積書の数量欄と並べるだけです。
数量がそろってはじめて、金額の高い安いが言えるようになります。福井の住まい情報もあわせてご覧ください。
よくある質問
屋根カバー工法は何年もちますか
屋根材によって変わります。金属屋根はメーカーが商品ごとに保証年数を出しているので、見積書に書かれた商品名で確かめてください。カバー工法では古い屋根の下にある防水シートを替えられないため、そちらの寿命も合わせて考えることになります。
カバー工法と張り替えはどちらが安いですか
古い屋根を撤去して処分する費用がかからない分、カバー工法のほうが安く収まります。差は20万円から40万円が目安。ただし野地板が傷んでいる家では上に載せられないので、張り替えを選ぶことになります。
見積書の屋根面積が正しいか確かめられますか
1階の外周に軒の出を60センチほど足し、屋根の勾配の係数を掛ければ概算が出せます。この数字と見積書の数量が2割以上ずれていたら、立面図から出したのか現地で測ったのかを聞いてみてください。国の積算基準では、軒先までを含めた面積で数えると決められています。
外壁塗装と同時にやると足場代は安くなりますか
足場は建物の外周に組むので、屋根と外壁で同じものを使えます。時期を合わせれば足場は1度で済むので、9万円から30万円かかる足場代が1回ぶん浮きます。ただし工期は長くなるので、住みながらの工事では期間も見ておきたいところ。
地域によって費用は変わりますか
職人の賃金に差があります。国が毎年決める公共工事設計労務単価を見ると、板金工の1日あたりの金額は、最も高い3つの都県で35,800円、最も低い県で26,300円。1.36倍の差があります。ただし47都道府県のうち38県しか公表されていないため、この単価がそのまま戸建ての見積もりに入るわけではありません。
※参照元:令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価表|農林水産省・国土交通省(2026年8月時点)